決済マーケティングのカオスマップ?:米国のCLO(Card Linked Offer)プレーヤーまとめ

私が所属するカンムという会社では、クレジットカード会社と組んで、CLO(Card Linked Offer)という事業をさせてもらっている。
※CLOというサービスはこの記事が詳しい。
これはもともとアメリカで興ったビジネスモデルなのだが、アメリカでは既に年間10億ドルを超える市場となっている。
2008年からはじまったこのCLOという市場であるが、今では多くのプレーヤーが存在ししのぎを削っている。
ちょっと古い記事ではあるが、CLOサービスを提供するプレーヤーがわかりやすくまとめられていたのでご紹介。

» Card Linked Offer (CLO) solutions – A peek! – BayPay Members Blogs
この図がとても分かりやすかった。
日本の人にも分かりやすいように、下の方に日本で該当する決済プレーヤーを配置してみた。
CLOベンダーは、大きくこの3つに分けることができる。
・決済センターと組むベンダー
・ブランドと組むベンダー
・イシュアと組むベンダー

■決済センター(Payment Processor)と組むベンダー

CardSpringという会社は、決済センターのFirst Dataと組んで、金融機関・加盟店向けにOfferWiseというCLOサービスを提供している。
決済センターとは、お店に端末を置いてお店とカード会社の間をつなぐ決済プレーヤーだ。
OfferWiseは、お店にFisrt Dataの端末をおけば、すぐに使いはじめることができる。
例えば、ユーザーがForsquareなどのメディアでカード番号を登録しておいてお店のオファーを受け取るとする。
お店では、そのカードで支払いをされると自動で割引され、リアルタイムに集計できる。
CardSpringは、LinkedIn創業者のReid Hoffmanが投資していることでも有名。

■ブランドと組むベンダー

ブランドというのは、いわゆるVISAやマスターカードなどの決済ネットワークを提供するプレーヤー。
それぞれのブランドが独自にCLOサービスを提供している。
マスターカードは、Truaxisというベンダーを買収し、Open Platform APIという、マスターが推進している決済APIの一つとして、CLOを提供している。
Amexは独自開発してソーシャルサービス(Facebook, Twitter, Forsquare)と連携するサービスを展開している。
Amexはブランドの中でもユニークで、会員と加盟店を自分で持っている。(VISA・マスターはネットワークだけ)
よって、会員にWeb上で告知し、Facebook IDとカード番号を登録してもらって、Like!してもらえば自動でオファーが登録される、という仕組みを作れている。
VISAは、この分野では後れを取っているが、世界一(銀聯が最近抜いた?)のブランドとして、面白い動きをしてきそう。

■イシュアと組むベンダー

イシュアは、いわゆるカード発行会社で、アメリカだと銀行がデビットカードを中心に発行している。
この領域が一番、独立系のベンダーが多く、Cardlyticsはバンク・オブ・アメリカと、Cartera CommerceはWells Fargoと組んで、サービスを提供している。
それぞれのカード会員に、Web明細やらアプリやらを通してオファーを提供し、お店でそのカードを使うと自動で割引が受けれる、というもの。
弊社のCLOも、クレディセゾンというイシュアと組んでサービスを提供しているため、この分類に入る。

どのCLOベンダーが勝つのか?

この記事の最後で、CLOベンダーの乱立は加盟店に手数料という負担を強いることになる、よってブランドの提供するCLOが、手数料を求める必要もなく、良いサービスととして大きくなりそう、と述べている。
実際、多くの新興ベンダーは、データ解析やモバイル展開などに強みを持ちつつ、よりブランドとの関係性に重きをおいているそうだ。
同じCLOでも、色々なバリューの提供の方法がある、ということだろう。
CLOは日本でも始まったばかりの領域で、そもそも認知がされていない状態なので、弊社としても探り探りで商品開発をしている。
そんな新しい市場を一緒に作っていきたい人を募集しています!(結局ハイアリングに流すという…)

銀行をクールにするSimpleの2013年振り返り

ずっと昔からウォッチしてた、Simple(昔はBankSimple)。
銀行をもっとクールに!という標語で創られたスタートアップで、使いやすいオンラインバンキング機能を提供することで注目を集めていた。
ビジネスモデルもユニークで、米国では一般的な口座管理費を会員から取らずに、預かっている預金の運用でマネタイズしている。
そんなSimpleが、2013 Our Year in Review という特設サイトを作って2013年を数値的に振り返っていたので紹介する。
UI自体も小綺麗な感じで、参考になる。
このサイトでは、Transactions(決済処理)、Support(サポート体制)、ATM、Customersの4つのトピックについて数値で表現してる。
その中から銀行に関係する、TransactionsとATMsというトピックをピックアップしてみよう。

■Transactions(決済処理)
・流通額
 $1,656,907,200≒1723億円
・決済処理数
 6,621,130回
・預金残高
 $64,055,187≒66.6億円
・決済手数料(振込)
 $0

■ATMs(ATM利用)

・ATM引き出し金額
 $19,655,460≒20.4億円
・ATM引き出し回数
 191,707回
・平均引き出し金額
 $103≒1.07万円
・払わなくて済んだATM手数料額
 $264,392≒2,749万円

日本の大手決済代行会社、GMP−PGの年間の決済処理金額は約1.2兆円(3100億円×四半期)で、その1/10って結構多い。
ただ、預金残高が66億円と、日本の小さな地銀よりも小さい。預金文化じゃないってことだろうか。
でも逆に、スタートアップが預金を個人から66億円集めるってのはすごい。
リリース当初から口座開設を招待制にしていて、数を絞っているのだけど、口座数はちょっと調べた限り分からなかった。
Quora辺りを熟読すればでてきそう。
最後に、会社のステータスを入れてるのがいい感じ。

» Simple | Worry-free Alternative to Traditional Banking

 

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国内カード会社とスタートアップの取り組みまとめ(2013年)

最近、カード会社とスタートアップ系の取り組みが活発になってきたような気配がしているので、2013年の資本業務提携・業務提携についてまとめてみた。
ここらへんの業界のスタートアップ(ITベンチャー含む)といえば、端末・スマホ決済、決済代行、会員向けサービス、の3つに分けれそう。
※いわゆる、techcrunchBridgeに出るような会社さんを中心に、あとは個人的な興味で入れました。
■シンクライアント端末・スマホ決済
・2013/4月 Coineyとクレディセゾンが業務提携。2013/8に資本提携も。 press1 press2
・2013/5月 Squareと三井住友カードが戦略的業務提携 press
・2013/7月 Anywhereを運営するリンク・プロセシングとJACCSが業務提携。
 10月にはUCカードも資本提携。press1 press2
・トヨタフィナンシャルサービス、JCB、三井住友カード、UCカードから出資を受けている
 シンクライアントCCT端末のTMN(Transaction Media Network)が本格営業開始。
■決済代行
・DGの中間持株会社、econtext Asiaに、三井住友カード、クレディセゾン、JCBが出資。
 2013/12月には、香港証券取引所に上場。press
・2013/12月 DeNA子会社のPaygentに、三菱UFJニコスが出資。50%を持つことになり、持分法適用子会社
 になる。press
・2013/12月 開発者向けカード決済サービスのWebPayとトヨタファイナンスが業務提携。press
■会員向けサービス
・2013/6月 CLO(Card Linked Offer)ベンダーのカンムとクレディセゾンが、CLOサービスをリリース。press
・2013/8月 スマホポイントサービスのスマポと、三井住友カードが本格的なO2Oキャンペーンを実施。press
・2013/11月 クラウド会計ソフトのfreeeとクレディセゾンが、業務提携。news

※図は調べるおさんを目指して作ったのだけど、めっちゃむずい。やっぱ調べるおさんのセンスすごい。
スマホ決済・決済代行は業界的に大事なのはわかってるから、それぞれのカード会社がそれぞれ相性の良いプレーヤーを囲っているイメージ。
会員向けサービスは、今まであまり得意でなかったマーケティング分野に徐々に乗り出すための一歩って感じで、まだ各社探り探りっぽい。

 

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一介のエンジニアが大手カード会社とアライアンスするまでに工夫したこと

遅ればせながら、6/24にクレディセゾン様と、日本で始めてのCLOビジネスを始動させることができました。
» クレディセゾンとカンムが、カード決済連動型サービス「セゾンCLO」を6月24日より開始
ここまで来るのに1年以上かかりました。
長丁場は覚悟していましたが、なかなかしんどい1年でした。
なんとなくですが、最近、こういうベンチャーと大手企業の提携が増えている印象があります。
今後そういう事例はもっと増えていくはずで、もっとエンジニアにもそういう世界を知ってもらいたいと思い、前職も研究開発が仕事で、まるでBiz Dev(営業含め)をやったことがない私が、どのように大きなカード会社と仕事ができるようになったか、この1年で苦労した点、工夫した点をまとめした。

開発を手伝いながら、一気に業界知識を詰め込む

もともとMarketgeekというサイトを開発していて、証券業界のことはなんとなくわかっていました。
けれども、同じ金融とはいえ、カード(決済)業界は全く違う業界で、CLOをやるかどうかの意思決定をするにも、一から勉強し直す必要がありました。
そこで、昔からお世話になっている、Coiney@adwarf姉さんにお願いして、数ヶ月間Coineyのプロトタイプ開発を手伝う代わりに、業界のことについて一から教えていただきました。
開発ができる、というエンジニアの武器を使った、スムーズな業界の入り方だったと思います。
今でも「昔Coiney手伝ってました。」と言うと話が盛り上がりますしf^^;
また、その期間中、ひたすらアメリカのCLO事情を調べまくり、全てファイリングしておきました。

Facebookで一気に人脈を広げる

次に行ったことは、業界の人に接触することでした。
ただ業界知識あるだけだと、ただの業界オタクになってしまいますし、そもそもアライアンスに向けた提案がはじまりません。
かといって今まで全く関わりのない業界で、一人も知り合いなんていない。。。
そこで、Facebookでカード会社で働いているっぽくて、新しいことに寛容そうな人、20人くらいにひたすらメッセージを送りました。
ダメ元のつもりだったのですが、2/3くらいの人からお返事をいただき、半分の人と実際にお会いすることができました。
メッセージを送るとき工夫したのが、カード会社でもひとつのテーマである「購買データの利活用」について新しいアイディアが聞けそう、と思っていただくために、「前職で人工知能を研究していた」「Web業界で10年以上働いてきた」等、カード会社の中ではあまり見ないタイプのキャラで自己紹介しました。
ここで、5,6社のカード会社の方とお知り合いになり、だいぶ業界の全体像もわかってきて、CLOを本格的にはじめる!と意思決定をしました。
そして、実際にカード会社への提案活動を始めることとなります。

テレアポしまくる

ただ、CLOというビジネスは、カード会社からではなく、お店(加盟店)からお金をいただくモデルになります。
なので、どれだけカード会社に詳しくなっても、「で、加盟店のニーズあんの?」と詰められたら何も言えません。
そこで、加盟店候補リストを作り、ひたすらテレアポを開始しました。
私は今まで大学のバイトも全てエンジニア系で、営業どころか接客もやったことがなく、テレアポは非常に苦痛でした。
単純に、ガチャ切りされたら凹むし、自分の本気の事業について実際のお客様のリアクションがもろに見えるので、とてもストレスフルな期間でした。
90%近くは「興味ない」「今入らない」というリアクションでしたし。
とは言え、最終的に10社近くの大手加盟店様とアポが取れ、実際に会ってニーズをヒアリングできたのは、大変勉強になりました。
これで肌感として、「商品設計次第で、ニーズは確実にある」と言い切れるようになり、カード会社への提案に自信を持てるようになったと思います。
また、定期的にやりとりさせていただく会社様もあり、個人的にもめちゃくちゃ良い経験でした。
(まだ出資いただいていない時に、@Anritさんにスクリプト作成からシミュレーションまでお手伝いいただきました。感謝。)

提案しながら仕様を固める

カード会社への提案の準備が整い、いくつかのラインで実際に提案活動を開始しました。
どベンチャーどころから、システムもない、組織もない中で会ってもらえるか不安ありありでしたが、「購買データの利活用」というテーマはどのカード会社でも持っていて、イニシャルのご説明の場を用意いただくことは結構できました。
しかし、そこから先につなげるのは大変でした。
というのも、「こんなビジネスがあります。」「加盟店ニーズあります。」「データ分析できます。」だけで社内の稟議になんて上がりません。
けれども、カード会社内のシステムの知識もほとんど無いので、ふわっとしたシステム連携イメージしか描けません。
まさにニワトリタマゴの状態でした。
ここで、エンジニアでよかったと思ったのですが、先方のシステムについてヒアリングしながら、「それならこういうシステムはどうですか?」「これなら実現できますよ」という感じでその場で仕様提案する、というのを繰り返していたら、時間はかかりましたが、ある程度実現可能な絵に落とすことができました。
(先方のご担当者の方にかなり感謝。)
自分の出自がエンジニアであることの武器を、改めて実感した時でした。

仕様を固めながら開発する

とは言え、システムのヒアリングをしたからといって、具体的な仕様イメージができたわけでありません。
ほぼほぼアライアンスが決まってからも(リリース3ヶ月前)、引き続きヒアリング・仕様の詰めは続き、リリースの1ヶ月半前くらいまで、確固たる仕様がないまま、これはいるだろうという機能を中心に、予測ベースで開発を進めていました。
そして、仕様がある程度固まったのがリリース1ヶ月前で、ここから怒涛の集中開発が始まります。
ここでも自分がエンジニアてよかったと思うのが、先方とのコミュニケーション=仕様決定になるので、かなり工程をはしょることができました。
それでもギリギリのリリース日程でしたがf^^;
(弊社エンジニアに多大な負担をかけてしまった。。。)
なんとか6/24のリリースに間に合わせることができました。
イマココ。

まとめ

とまぁ、日記風に今までの経緯をまとめましたが、何が言いたいかというと、「エンジニアでもBizDevできる。てかむしろ強い。」ということです。
もちろん、契約条項の詰めや政治もあるので、性格的な向き不向きや、経験が必要な部分もあります。
しかし、なんとなく日本のエンジニアの方は、「自分はBizDevなんてそんな」っていう人が多い気がしていて、とてももったいなく感じています。

みんな大好きYconのこの本を読んで感じたことでもあるのですが、「シリコンバレーのエンジニアがすごいのは、技術力・層の厚さだけでなく、エンジニアが自分で営業もするところだ。」ということです。
もし、野心があるエンジニアなのであれば、BizDev周りにもチャレンジされたら面白い世界になるな〜と思うので、そこんとこよろしく!
(もちろん、技術を突き止めていくことも大事だと思います。ただ、BizDev経験のあるエンジニアって本当に少ない。)
ちなみに弊社でもそういう野心あるエンジニアの方を募集しています。
(追記:エンジニアの方に営業をお願いする予定はございませんf^^;)

https://kanmu.co.jp/
※Update(2019/02/01)
※今までの話は、複数のカード会社様と話を進めていた経緯もあり、特定の会社様とのエピソード、というわけではありません。

カードの信用情報を簡単にチェックできるCredit Karmaがすげー伸びてる

久々の投稿だが、最近チェックしている金融系サービスがある。
その名も「Credit Karma」。
アメリカではクレジットカードが、全購買の30%も使われているが、そのクレジットカードの信用情報”クレジットスコア”というのも一般的である。

アメリカにおいては、支払い情報(履歴)であるクレジットヒストリー及び、クレジットヒストリーによって計算されるクレジットスコアは、生活を大きく左右する指標となっている。クレジットカードの取得の可否やローン審査における金利への影響、部屋の賃貸、さらには就職活動にも影響を与えるという。クレジットレポートがなければいくら現金を持っていても信用してもらえず、部屋は借りられない[2]。クレジットスコアが低ければ、ローンの金利は10%以上も高くなり、就職には困難が伴う。 » 信用情報 – Wikipedia

とWikipediaにもある通り、クレジットカードの信用をスコア化するもので、生活にかなり影響を及ぼしているようだ。
しかし、そのクレジットスコアは、今まで信用機関が独自に試算し、チェックするのが面倒くさかった。
それを解決するのが Credit Karma だ。

何はともあれ、下記のチャートを見てもらいたいのだが、めちゃくちゃ伸びている。
Techcrunchによれば、今年1月時点で、1日に10万人ペースでユーザーが増加し、既に200万人が登録しているとのこと。

さらに Inc. が発表する、2012年伸びた企業ランクにも40位にランク入りしている。

ではどういうビジネスモデルかというと、Mint.com と同様、広告収入で生計を立てている。
ただ普通の広告ではなく、保険やローンの切り替えや特典の利用といったものだ。
しかも、カードの信用情報というかなり重要な個人情報をベースにマッチングを行なっているので、金融商品の広告にはとても相性が良い。
2007年5月に創業し、去年の9月時点で合計300万ドルを調達、既に年商570万ドルを達成している。
個人的に、Web上での個人の認証・信用情報に、決済の信用情報を使う、というアイディアにはとても興味がある。
OpenIDでもそういう信用情報との連携を検討している動きがあるらしく、オンラインでの個人のアイデンティのあり方は、これからホットなトピックになっていくのではないか。
定量化できる最も信用のおけるスコアだと思うし。
同様のサービスに Credit Sesame というサービスもある。
ちなみに、日本でも CIC という機関が、1000円で自分の信用情報を紹介できるサービスを提供している。
Win機、IE8未満のみ、というWeb業界なら発狂しそうなスペックのマシンでしか、パソコンでの開示はできないが、クレジットカードを使っている人は一見の価値があるのではないだろうか?

日米のO2O系サービス徹底比較:カオスマップ作りました

前回の、クレジットカードが次のアプリプラットフォームになる、という記事で、決済の仕組みがオープンになり、様々な開発者が決済の現場に新しいサービスを持ち込んでくるだろう、とReid Hoffmanの予言を紹介した。
今回は、決済とO2O(Online to Offline)サービスの融合に関する、非常によくまとめられた資料を見つけたのでご紹介したい。
正確にはO2Oというよりも、もっと定義を広く、リアル店舗を絡めた全ての事業領域のまとめといった感じ。

最近の購買行動の変化

ここ最近、スマホや価格比較サイト、ECの充実によりリアル店舗での購買行動が劇的に変化している。
昔は、ただ単にお店に言って現金で買う、という買い物の流れだったが、今はまずネットで最安値のお店を調べたり、クーポンを探したり来店前に調べる、というアクションが加わった。
また、店舗に行った際も価格比較サイトやECの最安値を提示して値切ったり、その場でチェックインしてクーポンを見せたりできるようになった。
さらには、決済手段も、電子マネーやスマホ決済など多種多様になった。
それはつまり、関係するサービス・企業が多くなってきている、ということでもある。

ショッピングエコシステム・カオスマップ


この資料では、関連企業をカオスマップ形式で分類している。
アドテクのカオスマップもカオスだが、こちらはこちらでカオスだ。
ただ、GoogleやGrouponならまだしも、その他の米国企業はほとんど知らないので全体像がつかみにくい。
そこで日本版を簡易的に作ってみた。

日本版ショッピングエコシステム・カオスマップ

アメリカに比べてスカスカな感があるが、まだプレーヤーが少ないというのと、筆者があまり関連企業を知らない(特に大手B2B)ため、そこはご容赦いただきたい。
ただ、ほとんど既知の会社ばかりなのでカオスマップの説明がしやすい。

このように、左側を企業サイド、右側をマーケティング(消費者)サイドと見ると分かりやすい。
真ん中の円は、実際に消費者と接するサービスを提供する企業群になる。
それぞれの分野を日本の業者分類で言うと、左上から、こんな感じだろうか。
・Marketing/Research:総研、市場調査
・Payments:決済
・Point of Sale:POSレジ
・InStore Marketing:店舗内販促
・Integrated Systems:流通システム
・Bar Code Scanners:バーコードスキャナ
・Digital Coupons:オンラインクーポン
・Rewards/CLO:限定特典
・Customer Loyalty: ポイントカード
・ Traditional Coupons:オフラインクーポン
・Account Marketing:広告代理店
・Digital Commerce:EC、レコメンドエンジン
・eReceipts:電子レシート
それぞれ見ていくと、下記の4つのホットトピックが浮かび上がってくる。
これらの普及により、プレーヤーに変化が起きてきていて、多くの事業チャンスが生まれている。
・スマホ、iPad
・デジタルサイネージ
・電子マネー
・Big Data、データ分析
逆に言えば、アメリカで進んでいるのに日本では変化が起きていない分野にも、誰も気付けていない事業チャンスが眠っているのかもしれない。

まとめ

他にも様々な示唆を提示してくれているこの資料だが、今回はプレーヤーの全体像にフォーカスして記事を書いてみた。
これらがリアル店舗を絡めた事業を行うスタートアップの人の助けになると幸いである。
日本版カオスマップについて、こういう企業がある!この企業はむしろこっちじゃないか?などありましたら、コメント欄でお知らせいただけるとありがたいです。
※ただいま僕は仲間を募集しています。データに強いエンジニアの方、是非に!→詳細
[追記]
2014/1/24 弊社でも、CLO(Card Linked Offer)というO2Oサービスを開始いたしました。参考↓
» 決済マーケティングのカオスマップ?:米国のCLO(Card Linked Offer)プレーヤーまとめ
[訂正]
2012/8/8 カオスマップ、POSエリアを中心に7社追加。POSとカードリーダー(決済)を区別。
[追記]
2012/8/9 スペースに限りがありますので、掲載依頼等にはお応えできない場合もございます。

仲間募集

このブログを始めた理由の一つとして、今ままで潜んでいた自分が、何をやりたくて何をやっているのか伝えていくという意図がありました。
今、本気の事業を勧めていて、本気で仲間を集めています。

何をやりたいのか?

僕が実現したいというのはこういう世界です。
「皆が自分のお金をちゃんと管理でき、幸せになるお金の使い方が分かる世界」
僕は大学1年の頃からベンチャー企業に関わってきました。
その時、シリコンバレーに比べてベンチャーに回っているお金があまりにも少なくないか?と感じていて、それが金融に興味を持ったキッカケでした。
金融について勉強していくにつれ、今まであまりにもお金の流れに無頓着だったと思うようになりました。
何も考えずに銀行にお金を預け、何も考えずに税金を払っていました。
預けたお金や払った税金はどこかに回っているわけですが、全く意識していませんでした。
このことに非常に大きな問題意識を持ちました。
もともと、個人のお金をもっと強力なものにしようと思い、個人投資家向けのツールを作っていたのですが、そもそも個人投資家自体少なく、根本から皆のお金に対する価値観を変えないと、大きな変化は起こせないと感じていました。
まず、自分のお金をちゃんと管理できるサービスを作る。
その上で、どこにお金を回せば、自分の理想とする人生・社会を実現できるのか考えられるようにし、そこにお金をちゃんと回せるインフラを作る。
日本の個人金融資産は1500兆円と言われていますが、その0.1%の1.5兆円を目標に、新しいお金の流れを作ります。

何をやっているのか?

ちゃんとお金を管理できるようにするには、まず自分の収入・支出と現在の資産(貯金など)・負債(クレジットカード未払金など)を定期的にチェックする必要があります。
今まで僕も色々な家計簿ツールやExcelで管理していたのですが、5回くらい挫折していますf^^;
ある程度自動化され、チェックするモチベーションを保つ何かが必要だと考えました。
そこで目をつけたのが、クレジットカードの明細。
身の回りの人100人くらいにアンケートを取った所、クレジットカードの明細を、3割くらいの人が毎月チェックしていて、3割くらいの人がチェックしたいけど面倒くさくてできていない、という結果が出ました。
まず、カードでの支払いをちゃんと管理できるようにする。
自分の購買に合わせてお得な情報や特典が出てくると、長続きするのではないか?
そこで、Card Linked Offer(カード連携特典)という事業モデルに行き着きました。
これは、自分の購買履歴を分析して、自分に合ったお店の限定特典をレコメンドしてくれ、会員はそのお店でカードで支払うと自動で割引が受けれる、というモデルです。
詳しくはこちら→ アメリカのカード連携特典(CLO)サービスまとめ
既にいくつかのカード会社とお話を始め、お店のお客様も大手小売・飲食業を中心に7,8社様程、興味を持っていただいている状況です。
自分でお店の営業を行なって、確実にお店側からもニーズがあると確信しました。

将来的には、カードに限らず銀行口座やSuica・Edyなどの残高も自動管理できるようにします。
さらには、PFM的なサービス、自分のお金や生涯設計を踏まえた上で、あらゆる分野のお店や商品・サービスをオススメする、銀行の窓口のようなサービスにしていければ、新しいお金の流れを作れると信じています。

コアはテクノロジー

Card Linked Offerを気に入ったもう一つの点が、技術力がそのまま事業のコアになるところでした。
元々僕は、SFCの研究開発ベンチャーで、簡単な自然言語処理や統計解析分野のエンジニアリングをやっていたのですが、この最先端のCSを活かせて、かつちゃんと継続するために儲かる事業を模索していました。
Card Linked Offerでは、会員とお店のマッチング技術がそのままビジネスのコアになり、夢見てきた世界レベルの技術サービスベンチャーを創れると感じました。
会員とお店のマッチングアルゴリズムの開発や、高セキュリティ下での大規模データ処理など、技術的にチャレンジングな課題が山盛りです。
こういう挑戦にしびれる、データ解析系や数学の出来るエンジニアと一緒に会社を創って行きたいと思っています。
ちなみに僕の好きな言語はPythonです。

新しいお金の流れを新しいテクノロジーで作り出す。
こんな、めちゃくちゃ大変でエグい事業ですが、チャレンジしたい仲間を募集しています。
ご興味ある方はこちらまでご連絡ください → https://kanmu.co.jp/
お気軽にTwitterで話しかけていただいても結構です!→@8maki

アメリカのカード連携特典(CLO)サービスまとめ

[追記. 2013.4.30] 私の所属する会社でもCLOをリリースしました→Kanmu CLO
前回、クレジットカードが次のアプリプラットフォームになる、という記事を書いた。
クレジットカード決済のデータがオープンになり、その上に色々なサービスが乗っかる、という話なのだが、オープンとは言わないまでも、クレジットカードを使った 新しいサービスが次々と生まれている。
中でもCard Linked Offer:カード連携特典(またはMerchant Funded Rewards:加盟店負担リウォーズ)という分野は、既に100以上の金融機関(カード会社、銀行)が利用していて、非常にホットな分野である。

CLOとは?

CLOについて説明する前に、クレジットカードの会員向け特典を思い浮かべてもらえると話が早い。
要は、会員の購買履歴を分析して、その会員に合ったお店の特典(クーポン)を提供し、実際にそのお店でカードで支払えば、自動で割引やキャッシュバックといったサービスが受けられる、という代物である。
会員のメリットは、自分に合った店の特典だけが得られるのと、特典をいちいち紙に印刷して持っていく必要がない点。
お店のメリットは、ターゲットのお客にだけ訴求でき、新たな設備投資やオペレーション変更が必要ない点。
カード会社のメリットは、カード会員一人あたりの利用額を上げられる点。
事実、このプログラムを導入したカード会社の、一人あたりカード利用額が年間で約$500 も上昇したという調査が出ている。
このように関わる3者すべてにメリットがあり、グルーポンの問題を補う新しい販促手段として注目されている。

Cardlytics

アメリカのCLOベンダーの雄は、なんといってもCardlyticsである。
今年のFinovateEurope2012で優勝したのも記憶に新しい。
Cardlyticsがユニークだったのが、クレジットカード明細の目立つ箇所に、特典を入れ込んだところにある。

(via netbanker

上記では、バーガーキングの購買履歴にマクドナルドの特典を表示している。
いわゆるリプレイス広告である。
カード会員は、あとはMy Offersをクリックし、マクドナルドに行ってカードで支払えばいいだけだ。
Cardlyticsは2009年秋にリリースし、今や10以上の金融機関にこのシステムを提供、1億人近くのユーザーにリーチしている。
元々Cardlyticsのファウンダー陣は、Capital Oneというカード会社のマーケ担当者で、テスト運営もCapital Oneから開始している
同様の仕組みを提供している会社に、CarteraSwipelyなどがある。

Amex

多くの金融機関がベンダーにこの仕組みを外注している中、American Expressはこのような仕組みを自前で開発している。
Amexの面白いところは、うまくソーシャルメディアを活用しているところだ。

カード会員は、まずこのサイトで、自分のカードとソーシャルメディアのアカウントを関連付ける。
そして、FacebookやTwitterで流れてきた特典をクリックし、カードに登録しておいて、対象のお店でAmexで支払えば、サービスが受けられる。
Forsquareとの提携は、去年話題を読んだ。
今年の4月にもGrouponと提携し、さらにはZyngaとも提携して、最近非常に攻めている印象がある。

MoneyDesktop

また、CLOはPersonal Finance Managemetとの相性が良いビジネスモデルでもある。
MoneyDesktopはまさに、PFMにCLOを統合したサービスだ。
今年5月のFinovateSpringでWinnerを取っていた。
要は、PFM上でも購買履歴を抽出できるので、それを分析してユーザーに合った特典を提供する。
その仕組みを主に金融機関向けに販売していて、大口顧客はVISAのプリペイドカードらしい。
彼らの強みは、なんといっても一つのカードに縛られない点だ。
AmexはAmexの購買履歴しか使えないが、MoneyDesktopではユーザーの全てのカード・口座を引っ張ってこれ、より高度なマッチングが行える、と書いてある
ただ、ユーザーとして、すべての購買情報が一箇所に集められ、それを分析されるというのには、一抹の不安が残る。
今後どのようにこのサービスが進化していくのか、どういう課題にぶち当たるのか、見守りたい。

日本の状況

日本ではCLOは行われているのか?
現状、特に購買履歴を分析してうんぬん、カード明細に特典を載っけてうんぬん、という話は聞かない。
むしろ、カード会社のポイントモール戦争が激しさを増している。
ポイントモールというのは、そのサイトを経由してAmazonなどのECサイトに行き、その会社のカードで払うとポイントが2〜30倍付く、というものである。
最大のポイントモール、永久不滅.comでは、既に年間500億円以上の流通額を誇っている。
日本の場合、個人情報の扱いが米国よりも厳しいため、購買履歴の分析は慎重になっている印象があるが、貸金業法改正による売上下落もあり、徐々にデータを使ったマーケティング会社へと変貌していくのではないか、と個人的には思っている。
 
あと、アメリカの話に戻るが、LocalBonusというサービスも興味深い。
» クレジットカードで各店舗のポイントカードを一括管理!

クレジットカードが次のアプリプラットフォームになる

金融スタートアップ分野で最も熱心な投資家と言えば、Reid Hoffmanがまっさきに挙がるだろう。
Reid Hoffmanは、Paypalマフィアの一人で、決済分野に明るいのは当然だろうが、大きなビジョンを持って適切に投資しているのが、この記事から分かる。
» The Credit Card Is The New App Platform
この記事は、Reid Hoffman自身が書いていて、 「クレジットカードが次のアプリプラットフォームになる」と題打ち、非常に納得感のある未来像を示している。
アップルがiOSをプラットフォームとして公開したように、クレジットカードを始めとする決済の仕組みがオープンになり、様々な開発者が決済の現場に新しいサービスを持ち込んでくるだろう、と書いている。

CardSpring

事実、彼はそれを体現しているような会社、CardSpringにも投資している。
CardSpringは、「オンライン広告とリアルの世界をつなげる」というビジョンの元、オンライン広告にクレジットカードをひもづけるプラットフォームを提供している。
これを使えば、リアル店舗のオンライン・クーポンにカード番号を入力して、実際にその店舗でそのカードで買い物をすると割引が受けられる、という実売につながるオンライン広告を作ることができる。
オンライン広告の接触と、実際の購買が結びつくのだ。
RetailMeNotというアメリカの大手クーポンサイトは、今年の4月、CardSpringを使ってそんなのような仕組みを構築した。
また他にも、 Coupons.comGrouponShopkickSwipelyTrialPayWrappといったO2O(Online to Offline)系のサービスにも、彼は広く投資している。

プラットフォーム化のインパクト

では、カードがプラットフォーム化するとどのようなインパクトがあるか?
彼は5つの変化を挙げている。
・プラスチックカードや紙のレシートが消える
すべての購買をデジタル化、クラウド環境に置くことができれば、お金の管理を物理的に行う必要がなくなる。
・より自分に合ったクーポンや特典が得られる
購買履歴を効果的に分析することで、その人が次に何が欲しいか、推測できるようになる。
すると、購買予知段階で、企業間で競争が起こり、一番自分に適した商品を選択することができる。
・個人のレビューがもっと活用される
実際に誰がその商品を買ったか分かるようになり、その商品を買う前に、その人の意見を聞くことができるだろう。
・購買をベースに自分の健康を管理できる
今週は飲み過ぎたから週末は休肝日にしよう、今月はジムに行っていないからジョギングでもしよう、といった健康管理をもっと厳密にできるようになる。
・ステータスの評価基準が変わる
今までは、一つの企業での行動でしか評価されていなかったが、企業を超えたステータスが生まれる。
例えば、航空会社の特典は、その航空会社を利用しないと得られなかったが、良く旅行に行く人に特別な特典を出す 、といったことができるようになる。
こういう未来にワクワクしつつも、非常に大きな問題もはらんでいる。

個人情報保護との戦い

購買情報というのは、非常にクリティカルな個人情報である。
購買履歴の共有といえば、Blippyが去年の春に姿を消したのは記憶に新しい。
» シリコンバレーの寵児, 買い物共有サービスBlippyがついに姿を消した
結局、購買履歴を友達同士で共有するメリットがあんま無かったんだよね、という結論になっているが、逆に言えば既にいた100万人近くのユーザーは自分の購買履歴を身内に公開していたわけだ。
自分でちゃんとコントロールでき、かつそれを補える程のインセンティブがあれば、購買履歴を企業や他の人に提供する行為自体は、自然になっていくのかもしれない。
ちょい前まで、皆がオンラインでクレジットカード番号を入力するのをためらっていたように。
ただ、ここはまだまだ議論の余地があるところで、既にこの問題に取り組んでいるアドテク事業者が、この道をどのように切り開いていくか、楽しみだ。

アメリカと日本の違い

さて、これまではアメリカを中心とした話だったが、このようなお話は日本でも可能なのか?
実現する上で、最も大きなハードルは、日本のカード利用率の低さだろう。
この図が非常に分かりやすいが、アメリカのクレジットカード・デビットカードの利用率は50%近くもある。
対して日本は電子マネー合わせても15%を超えない。

(via IR資料|クレディセゾン)

結局、現金は無視できないよね、というのが日本であり、購買のほとんどが現金なので、デジタル化していくのは時間がかかるかもしれない。
しかし、西洋は元々、小切手の文化があったからカード利用率が高い、というのはあると思うが、韓国では支払いの90%はカードでもあるわけだし、無理な話ではない気がする。
個人的には、デビットカードのような、”借金ではない”カードが、普及のカギを握ると感じている。

1枚でいろんなカードとして使えるDynamicsがMasterCardの公式ベンダーに

Dynamicsというキモいカードをご存知か?
物理的には1枚のカードなのだが、なんとこれ、2種類以上のカードとして使えるのだ。
下記のカードの画像を見ると、2つの丸があるのが分かる。
    
それぞれの丸の方向に対して、どのカードとして使うか、スマホやWebで設定することができるのだ。
この仕組みを使えば、あらゆるタイプのポイントカードや、クレジットカードを一つのカードにまとめることができる。
リアルTポイントカードだ。
先週、MasterCardの公式ベンダーになる、というニュースが出ていた。
既に40万ドルも資金調達しているし、何かの用途にはまったら一気に伸びるのかもしれない。
こちらに動画もある。