決済マーケティングのカオスマップ?:米国のCLO(Card Linked Offer)プレーヤーまとめ

私が所属するカンムという会社では、クレジットカード会社と組んで、CLO(Card Linked Offer)という事業をさせてもらっている。
※CLOというサービスはこの記事が詳しい。
これはもともとアメリカで興ったビジネスモデルなのだが、アメリカでは既に年間10億ドルを超える市場となっている。
2008年からはじまったこのCLOという市場であるが、今では多くのプレーヤーが存在ししのぎを削っている。
ちょっと古い記事ではあるが、CLOサービスを提供するプレーヤーがわかりやすくまとめられていたのでご紹介。

» Card Linked Offer (CLO) solutions – A peek! – BayPay Members Blogs
この図がとても分かりやすかった。
日本の人にも分かりやすいように、下の方に日本で該当する決済プレーヤーを配置してみた。
CLOベンダーは、大きくこの3つに分けることができる。
・決済センターと組むベンダー
・ブランドと組むベンダー
・イシュアと組むベンダー

■決済センター(Payment Processor)と組むベンダー

CardSpringという会社は、決済センターのFirst Dataと組んで、金融機関・加盟店向けにOfferWiseというCLOサービスを提供している。
決済センターとは、お店に端末を置いてお店とカード会社の間をつなぐ決済プレーヤーだ。
OfferWiseは、お店にFisrt Dataの端末をおけば、すぐに使いはじめることができる。
例えば、ユーザーがForsquareなどのメディアでカード番号を登録しておいてお店のオファーを受け取るとする。
お店では、そのカードで支払いをされると自動で割引され、リアルタイムに集計できる。
CardSpringは、LinkedIn創業者のReid Hoffmanが投資していることでも有名。

■ブランドと組むベンダー

ブランドというのは、いわゆるVISAやマスターカードなどの決済ネットワークを提供するプレーヤー。
それぞれのブランドが独自にCLOサービスを提供している。
マスターカードは、Truaxisというベンダーを買収し、Open Platform APIという、マスターが推進している決済APIの一つとして、CLOを提供している。
Amexは独自開発してソーシャルサービス(Facebook, Twitter, Forsquare)と連携するサービスを展開している。
Amexはブランドの中でもユニークで、会員と加盟店を自分で持っている。(VISA・マスターはネットワークだけ)
よって、会員にWeb上で告知し、Facebook IDとカード番号を登録してもらって、Like!してもらえば自動でオファーが登録される、という仕組みを作れている。
VISAは、この分野では後れを取っているが、世界一(銀聯が最近抜いた?)のブランドとして、面白い動きをしてきそう。

■イシュアと組むベンダー

イシュアは、いわゆるカード発行会社で、アメリカだと銀行がデビットカードを中心に発行している。
この領域が一番、独立系のベンダーが多く、Cardlyticsはバンク・オブ・アメリカと、Cartera CommerceはWells Fargoと組んで、サービスを提供している。
それぞれのカード会員に、Web明細やらアプリやらを通してオファーを提供し、お店でそのカードを使うと自動で割引が受けれる、というもの。
弊社のCLOも、クレディセゾンというイシュアと組んでサービスを提供しているため、この分類に入る。

どのCLOベンダーが勝つのか?

この記事の最後で、CLOベンダーの乱立は加盟店に手数料という負担を強いることになる、よってブランドの提供するCLOが、手数料を求める必要もなく、良いサービスととして大きくなりそう、と述べている。
実際、多くの新興ベンダーは、データ解析やモバイル展開などに強みを持ちつつ、よりブランドとの関係性に重きをおいているそうだ。
同じCLOでも、色々なバリューの提供の方法がある、ということだろう。
CLOは日本でも始まったばかりの領域で、そもそも認知がされていない状態なので、弊社としても探り探りで商品開発をしている。
そんな新しい市場を一緒に作っていきたい人を募集しています!(結局ハイアリングに流すという…)

アメリカのカード連携特典(CLO)サービスまとめ

[追記. 2013.4.30] 私の所属する会社でもCLOをリリースしました→Kanmu CLO
前回、クレジットカードが次のアプリプラットフォームになる、という記事を書いた。
クレジットカード決済のデータがオープンになり、その上に色々なサービスが乗っかる、という話なのだが、オープンとは言わないまでも、クレジットカードを使った 新しいサービスが次々と生まれている。
中でもCard Linked Offer:カード連携特典(またはMerchant Funded Rewards:加盟店負担リウォーズ)という分野は、既に100以上の金融機関(カード会社、銀行)が利用していて、非常にホットな分野である。

CLOとは?

CLOについて説明する前に、クレジットカードの会員向け特典を思い浮かべてもらえると話が早い。
要は、会員の購買履歴を分析して、その会員に合ったお店の特典(クーポン)を提供し、実際にそのお店でカードで支払えば、自動で割引やキャッシュバックといったサービスが受けられる、という代物である。
会員のメリットは、自分に合った店の特典だけが得られるのと、特典をいちいち紙に印刷して持っていく必要がない点。
お店のメリットは、ターゲットのお客にだけ訴求でき、新たな設備投資やオペレーション変更が必要ない点。
カード会社のメリットは、カード会員一人あたりの利用額を上げられる点。
事実、このプログラムを導入したカード会社の、一人あたりカード利用額が年間で約$500 も上昇したという調査が出ている。
このように関わる3者すべてにメリットがあり、グルーポンの問題を補う新しい販促手段として注目されている。

Cardlytics

アメリカのCLOベンダーの雄は、なんといってもCardlyticsである。
今年のFinovateEurope2012で優勝したのも記憶に新しい。
Cardlyticsがユニークだったのが、クレジットカード明細の目立つ箇所に、特典を入れ込んだところにある。

(via netbanker

上記では、バーガーキングの購買履歴にマクドナルドの特典を表示している。
いわゆるリプレイス広告である。
カード会員は、あとはMy Offersをクリックし、マクドナルドに行ってカードで支払えばいいだけだ。
Cardlyticsは2009年秋にリリースし、今や10以上の金融機関にこのシステムを提供、1億人近くのユーザーにリーチしている。
元々Cardlyticsのファウンダー陣は、Capital Oneというカード会社のマーケ担当者で、テスト運営もCapital Oneから開始している
同様の仕組みを提供している会社に、CarteraSwipelyなどがある。

Amex

多くの金融機関がベンダーにこの仕組みを外注している中、American Expressはこのような仕組みを自前で開発している。
Amexの面白いところは、うまくソーシャルメディアを活用しているところだ。

カード会員は、まずこのサイトで、自分のカードとソーシャルメディアのアカウントを関連付ける。
そして、FacebookやTwitterで流れてきた特典をクリックし、カードに登録しておいて、対象のお店でAmexで支払えば、サービスが受けられる。
Forsquareとの提携は、去年話題を読んだ。
今年の4月にもGrouponと提携し、さらにはZyngaとも提携して、最近非常に攻めている印象がある。

MoneyDesktop

また、CLOはPersonal Finance Managemetとの相性が良いビジネスモデルでもある。
MoneyDesktopはまさに、PFMにCLOを統合したサービスだ。
今年5月のFinovateSpringでWinnerを取っていた。
要は、PFM上でも購買履歴を抽出できるので、それを分析してユーザーに合った特典を提供する。
その仕組みを主に金融機関向けに販売していて、大口顧客はVISAのプリペイドカードらしい。
彼らの強みは、なんといっても一つのカードに縛られない点だ。
AmexはAmexの購買履歴しか使えないが、MoneyDesktopではユーザーの全てのカード・口座を引っ張ってこれ、より高度なマッチングが行える、と書いてある
ただ、ユーザーとして、すべての購買情報が一箇所に集められ、それを分析されるというのには、一抹の不安が残る。
今後どのようにこのサービスが進化していくのか、どういう課題にぶち当たるのか、見守りたい。

日本の状況

日本ではCLOは行われているのか?
現状、特に購買履歴を分析してうんぬん、カード明細に特典を載っけてうんぬん、という話は聞かない。
むしろ、カード会社のポイントモール戦争が激しさを増している。
ポイントモールというのは、そのサイトを経由してAmazonなどのECサイトに行き、その会社のカードで払うとポイントが2〜30倍付く、というものである。
最大のポイントモール、永久不滅.comでは、既に年間500億円以上の流通額を誇っている。
日本の場合、個人情報の扱いが米国よりも厳しいため、購買履歴の分析は慎重になっている印象があるが、貸金業法改正による売上下落もあり、徐々にデータを使ったマーケティング会社へと変貌していくのではないか、と個人的には思っている。
 
あと、アメリカの話に戻るが、LocalBonusというサービスも興味深い。
» クレジットカードで各店舗のポイントカードを一括管理!