7月 272012
 

金融スタートアップ分野で最も熱心な投資家と言えば、Reid Hoffmanがまっさきに挙がるだろう。
Reid Hoffmanは、Paypalマフィアの一人で、決済分野に明るいのは当然だろうが、大きなビジョンを持って適切に投資しているのが、この記事から分かる。

» The Credit Card Is The New App Platform

この記事は、Reid Hoffman自身が書いていて、 「クレジットカードが次のアプリプラットフォームになる」と題打ち、非常に納得感のある未来像を示している。

アップルがiOSをプラットフォームとして公開したように、クレジットカードを始めとする決済の仕組みがオープンになり、様々な開発者が決済の現場に新しいサービスを持ち込んでくるだろう、と書いている。

CardSpring

事実、彼はそれを体現しているような会社、CardSpringにも投資している。

CardSpringは、「オンライン広告とリアルの世界をつなげる」というビジョンの元、オンライン広告にクレジットカードをひもづけるプラットフォームを提供している。
これを使えば、リアル店舗のオンライン・クーポンにカード番号を入力して、実際にその店舗でそのカードで買い物をすると割引が受けられる、という実売につながるオンライン広告を作ることができる。
オンライン広告の接触と、実際の購買が結びつくのだ。

RetailMeNotというアメリカの大手クーポンサイトは、今年の4月、CardSpringを使ってそんなのような仕組みを構築した。

また他にも、 Coupons.comGrouponShopkickSwipelyTrialPayWrappといったO2O(Online to Offline)系のサービスにも、彼は広く投資している。

プラットフォーム化のインパクト

では、カードがプラットフォーム化するとどのようなインパクトがあるか?
彼は5つの変化を挙げている。

・プラスチックカードや紙のレシートが消える
すべての購買をデジタル化、クラウド環境に置くことができれば、お金の管理を物理的に行う必要がなくなる。

・より自分に合ったクーポンや特典が得られる
購買履歴を効果的に分析することで、その人が次に何が欲しいか、推測できるようになる。
すると、購買予知段階で、企業間で競争が起こり、一番自分に適した商品を選択することができる。

・個人のレビューがもっと活用される
実際に誰がその商品を買ったか分かるようになり、その商品を買う前に、その人の意見を聞くことができるだろう。

・購買をベースに自分の健康を管理できる
今週は飲み過ぎたから週末は休肝日にしよう、今月はジムに行っていないからジョギングでもしよう、といった健康管理をもっと厳密にできるようになる。

・ステータスの評価基準が変わる
今までは、一つの企業での行動でしか評価されていなかったが、企業を超えたステータスが生まれる。
例えば、航空会社の特典は、その航空会社を利用しないと得られなかったが、良く旅行に行く人に特別な特典を出す 、といったことができるようになる。

こういう未来にワクワクしつつも、非常に大きな問題もはらんでいる。

個人情報保護との戦い

購買情報というのは、非常にクリティカルな個人情報である。
購買履歴の共有といえば、Blippyが去年の春に姿を消したのは記憶に新しい。

» シリコンバレーの寵児, 買い物共有サービスBlippyがついに姿を消した

結局、購買履歴を友達同士で共有するメリットがあんま無かったんだよね、という結論になっているが、逆に言えば既にいた100万人近くのユーザーは自分の購買履歴を身内に公開していたわけだ。

自分でちゃんとコントロールでき、かつそれを補える程のインセンティブがあれば、購買履歴を企業や他の人に提供する行為自体は、自然になっていくのかもしれない。
ちょい前まで、皆がオンラインでクレジットカード番号を入力するのをためらっていたように。

ただ、ここはまだまだ議論の余地があるところで、既にこの問題に取り組んでいるアドテク事業者が、この道をどのように切り開いていくか、楽しみだ。

アメリカと日本の違い

さて、これまではアメリカを中心とした話だったが、このようなお話は日本でも可能なのか?
実現する上で、最も大きなハードルは、日本のカード利用率の低さだろう。

この図が非常に分かりやすいが、アメリカのクレジットカード・デビットカードの利用率は50%近くもある。
対して日本は電子マネー合わせても15%を超えない。

(via IR資料|クレディセゾン)

結局、現金は無視できないよね、というのが日本であり、購買のほとんどが現金なので、デジタル化していくのは時間がかかるかもしれない。

しかし、西洋は元々、小切手の文化があったからカード利用率が高い、というのはあると思うが、韓国では支払いの90%はカードでもあるわけだし、無理な話ではない気がする。
個人的には、デビットカードのような、”借金ではない”カードが、普及のカギを握ると感じている。