先日の金曜日、CLOベンダーの雄CardspringがTwitterに買収された。
» Twitter Acquires CardSpring To Power In-Tweet Commerce And Offers | TechCrunch
CLOベンダーと言っても、金融機関に導入してもらって自ら加盟店開拓するタイプではない。
決済センター(プロセッサー)とデータ連携し、RetailMeNotのようなメディアや、ウォルマートのようなリテールにCLO機能を提供する。
いわばASPのようなCLOベンダーだ。
CLOベンダーの分類はこの記事で詳しく書いている。
決済マーケティングのカオスマップ?:米国のCLO(Card Linked Offer)プレーヤーまとめ
2012年1月に$10Mを調達し、最近も日本に本格参入し、大型調達予定と聞いていたが、突然の買収だった。
Twitterから見た買収の第一目的として、自社広告の強化がまず挙げられる。
Twitter上でオファーを提供することができるようになるのだ。
具体的には、例えばTwitterに予めカード番号を登録しておいて、タイムライン上にマクドナルドの10%OFFオファーが流れてきたら、それをRetweetしてマクドナルドでカード払いをすると10%分が引かれている、というものだ。
(Twitter上にカード番号を入れておくのかどうなのかは不明)
もともとTwitterは、上記のようなことをAmex主体でAmex Syncというサービスで行っていたが、目下売り込み中のタイムライン広告の武器の一つにCLOを加えることになる。
また、Cardspringは、CardSpring Connectというサービスで、加盟店向けのキャンペーン管理ツールも提供していた。
これは、簡単にオファー出稿、ソーシャル管理ができるツールで、中小加盟店向けに提供していた。
TwitterはCardspring Connectを活用して、中小加盟店向けの広告・オファーソリューションを提供できるようになる。
二つ目の目的として、既にCardspringがサービス提供しているメディア・リテールに対して、Twitterを絡めた機能を提案することだろう。
例えば、RetailMeNotのCLOサービスに、「Twitterでshareしてくれたらプラス5%OFF」のような機能を追加提案することができる。
これにより、メディア・リテールのTwitter利用がさらに促進されるようになる。
三つ目の目的は、ソーシャルECのポータル化への布石、だろう。
例えば、Cardspringを買収して、CLO機能をTwitter上で提供すれば、ユーザーのカード番号を取得することができ、EC機能の提供もスムーズになる。
事実、最近Amazonと連携して、商品のURLをRetweetすれば、自動でショッピングカートに入るAmazonCartというサービスを展開していた。
New York Timesでは、次に買うのはStripeなんじゃね?と予想している(Twitter側は否定しているようだが)
» Twitter Inches Closer to E-Commerce With CardSpring Deal | New York Times
このソーシャルECポータル争いは、Facebookとの激しい闘いの様相を呈していて、この買収ニュースの直後に、Facebookから「Buyボタン」のテストを開始するというリリースが流れた。
Facebook Adに「Buyボタン」がついて、その場で商品を買うことができるようになるようだ。
このように、CardspringがTwitterに買われたことにより、CLO業界が別のプレーヤーも含む、大きな変化が起き始めそうだ。
CLOを導入している金融機関や既存のCLOベンダーは、配信面・加盟店営業という部分でTwitterという大きな競合が出てきたことで、新しい試みが必要となってくるだろう。
タグ: Cardspring
決済マーケティングのカオスマップ?:米国のCLO(Card Linked Offer)プレーヤーまとめ
私が所属するカンムという会社では、クレジットカード会社と組んで、CLO(Card Linked Offer)という事業をさせてもらっている。
※CLOというサービスはこの記事が詳しい。
これはもともとアメリカで興ったビジネスモデルなのだが、アメリカでは既に年間10億ドルを超える市場となっている。
2008年からはじまったこのCLOという市場であるが、今では多くのプレーヤーが存在ししのぎを削っている。
ちょっと古い記事ではあるが、CLOサービスを提供するプレーヤーがわかりやすくまとめられていたのでご紹介。
» Card Linked Offer (CLO) solutions – A peek! – BayPay Members Blogs
この図がとても分かりやすかった。
日本の人にも分かりやすいように、下の方に日本で該当する決済プレーヤーを配置してみた。
CLOベンダーは、大きくこの3つに分けることができる。
・決済センターと組むベンダー
・ブランドと組むベンダー
・イシュアと組むベンダー
■決済センター(Payment Processor)と組むベンダー
CardSpringという会社は、決済センターのFirst Dataと組んで、金融機関・加盟店向けにOfferWiseというCLOサービスを提供している。
決済センターとは、お店に端末を置いてお店とカード会社の間をつなぐ決済プレーヤーだ。
OfferWiseは、お店にFisrt Dataの端末をおけば、すぐに使いはじめることができる。
例えば、ユーザーがForsquareなどのメディアでカード番号を登録しておいてお店のオファーを受け取るとする。
お店では、そのカードで支払いをされると自動で割引され、リアルタイムに集計できる。
CardSpringは、LinkedIn創業者のReid Hoffmanが投資していることでも有名。
■ブランドと組むベンダー
ブランドというのは、いわゆるVISAやマスターカードなどの決済ネットワークを提供するプレーヤー。
それぞれのブランドが独自にCLOサービスを提供している。
マスターカードは、Truaxisというベンダーを買収し、Open Platform APIという、マスターが推進している決済APIの一つとして、CLOを提供している。
Amexは独自開発してソーシャルサービス(Facebook, Twitter, Forsquare)と連携するサービスを展開している。
Amexはブランドの中でもユニークで、会員と加盟店を自分で持っている。(VISA・マスターはネットワークだけ)
よって、会員にWeb上で告知し、Facebook IDとカード番号を登録してもらって、Like!してもらえば自動でオファーが登録される、という仕組みを作れている。
VISAは、この分野では後れを取っているが、世界一(銀聯が最近抜いた?)のブランドとして、面白い動きをしてきそう。
■イシュアと組むベンダー
イシュアは、いわゆるカード発行会社で、アメリカだと銀行がデビットカードを中心に発行している。
この領域が一番、独立系のベンダーが多く、Cardlyticsはバンク・オブ・アメリカと、Cartera CommerceはWells Fargoと組んで、サービスを提供している。
それぞれのカード会員に、Web明細やらアプリやらを通してオファーを提供し、お店でそのカードを使うと自動で割引が受けれる、というもの。
弊社のCLOも、クレディセゾンというイシュアと組んでサービスを提供しているため、この分類に入る。
どのCLOベンダーが勝つのか?
この記事の最後で、CLOベンダーの乱立は加盟店に手数料という負担を強いることになる、よってブランドの提供するCLOが、手数料を求める必要もなく、良いサービスととして大きくなりそう、と述べている。
実際、多くの新興ベンダーは、データ解析やモバイル展開などに強みを持ちつつ、よりブランドとの関係性に重きをおいているそうだ。
同じCLOでも、色々なバリューの提供の方法がある、ということだろう。
CLOは日本でも始まったばかりの領域で、そもそも認知がされていない状態なので、弊社としても探り探りで商品開発をしている。
そんな新しい市場を一緒に作っていきたい人を募集しています!(結局ハイアリングに流すという…)