一介のエンジニアが大手カード会社とアライアンスするまでに工夫したこと

遅ればせながら、6/24にクレディセゾン様と、日本で始めてのCLOビジネスを始動させることができました。
» クレディセゾンとカンムが、カード決済連動型サービス「セゾンCLO」を6月24日より開始
ここまで来るのに1年以上かかりました。
長丁場は覚悟していましたが、なかなかしんどい1年でした。
なんとなくですが、最近、こういうベンチャーと大手企業の提携が増えている印象があります。
今後そういう事例はもっと増えていくはずで、もっとエンジニアにもそういう世界を知ってもらいたいと思い、前職も研究開発が仕事で、まるでBiz Dev(営業含め)をやったことがない私が、どのように大きなカード会社と仕事ができるようになったか、この1年で苦労した点、工夫した点をまとめした。

開発を手伝いながら、一気に業界知識を詰め込む

もともとMarketgeekというサイトを開発していて、証券業界のことはなんとなくわかっていました。
けれども、同じ金融とはいえ、カード(決済)業界は全く違う業界で、CLOをやるかどうかの意思決定をするにも、一から勉強し直す必要がありました。
そこで、昔からお世話になっている、Coiney@adwarf姉さんにお願いして、数ヶ月間Coineyのプロトタイプ開発を手伝う代わりに、業界のことについて一から教えていただきました。
開発ができる、というエンジニアの武器を使った、スムーズな業界の入り方だったと思います。
今でも「昔Coiney手伝ってました。」と言うと話が盛り上がりますしf^^;
また、その期間中、ひたすらアメリカのCLO事情を調べまくり、全てファイリングしておきました。

Facebookで一気に人脈を広げる

次に行ったことは、業界の人に接触することでした。
ただ業界知識あるだけだと、ただの業界オタクになってしまいますし、そもそもアライアンスに向けた提案がはじまりません。
かといって今まで全く関わりのない業界で、一人も知り合いなんていない。。。
そこで、Facebookでカード会社で働いているっぽくて、新しいことに寛容そうな人、20人くらいにひたすらメッセージを送りました。
ダメ元のつもりだったのですが、2/3くらいの人からお返事をいただき、半分の人と実際にお会いすることができました。
メッセージを送るとき工夫したのが、カード会社でもひとつのテーマである「購買データの利活用」について新しいアイディアが聞けそう、と思っていただくために、「前職で人工知能を研究していた」「Web業界で10年以上働いてきた」等、カード会社の中ではあまり見ないタイプのキャラで自己紹介しました。
ここで、5,6社のカード会社の方とお知り合いになり、だいぶ業界の全体像もわかってきて、CLOを本格的にはじめる!と意思決定をしました。
そして、実際にカード会社への提案活動を始めることとなります。

テレアポしまくる

ただ、CLOというビジネスは、カード会社からではなく、お店(加盟店)からお金をいただくモデルになります。
なので、どれだけカード会社に詳しくなっても、「で、加盟店のニーズあんの?」と詰められたら何も言えません。
そこで、加盟店候補リストを作り、ひたすらテレアポを開始しました。
私は今まで大学のバイトも全てエンジニア系で、営業どころか接客もやったことがなく、テレアポは非常に苦痛でした。
単純に、ガチャ切りされたら凹むし、自分の本気の事業について実際のお客様のリアクションがもろに見えるので、とてもストレスフルな期間でした。
90%近くは「興味ない」「今入らない」というリアクションでしたし。
とは言え、最終的に10社近くの大手加盟店様とアポが取れ、実際に会ってニーズをヒアリングできたのは、大変勉強になりました。
これで肌感として、「商品設計次第で、ニーズは確実にある」と言い切れるようになり、カード会社への提案に自信を持てるようになったと思います。
また、定期的にやりとりさせていただく会社様もあり、個人的にもめちゃくちゃ良い経験でした。
(まだ出資いただいていない時に、@Anritさんにスクリプト作成からシミュレーションまでお手伝いいただきました。感謝。)

提案しながら仕様を固める

カード会社への提案の準備が整い、いくつかのラインで実際に提案活動を開始しました。
どベンチャーどころから、システムもない、組織もない中で会ってもらえるか不安ありありでしたが、「購買データの利活用」というテーマはどのカード会社でも持っていて、イニシャルのご説明の場を用意いただくことは結構できました。
しかし、そこから先につなげるのは大変でした。
というのも、「こんなビジネスがあります。」「加盟店ニーズあります。」「データ分析できます。」だけで社内の稟議になんて上がりません。
けれども、カード会社内のシステムの知識もほとんど無いので、ふわっとしたシステム連携イメージしか描けません。
まさにニワトリタマゴの状態でした。
ここで、エンジニアでよかったと思ったのですが、先方のシステムについてヒアリングしながら、「それならこういうシステムはどうですか?」「これなら実現できますよ」という感じでその場で仕様提案する、というのを繰り返していたら、時間はかかりましたが、ある程度実現可能な絵に落とすことができました。
(先方のご担当者の方にかなり感謝。)
自分の出自がエンジニアであることの武器を、改めて実感した時でした。

仕様を固めながら開発する

とは言え、システムのヒアリングをしたからといって、具体的な仕様イメージができたわけでありません。
ほぼほぼアライアンスが決まってからも(リリース3ヶ月前)、引き続きヒアリング・仕様の詰めは続き、リリースの1ヶ月半前くらいまで、確固たる仕様がないまま、これはいるだろうという機能を中心に、予測ベースで開発を進めていました。
そして、仕様がある程度固まったのがリリース1ヶ月前で、ここから怒涛の集中開発が始まります。
ここでも自分がエンジニアてよかったと思うのが、先方とのコミュニケーション=仕様決定になるので、かなり工程をはしょることができました。
それでもギリギリのリリース日程でしたがf^^;
(弊社エンジニアに多大な負担をかけてしまった。。。)
なんとか6/24のリリースに間に合わせることができました。
イマココ。

まとめ

とまぁ、日記風に今までの経緯をまとめましたが、何が言いたいかというと、「エンジニアでもBizDevできる。てかむしろ強い。」ということです。
もちろん、契約条項の詰めや政治もあるので、性格的な向き不向きや、経験が必要な部分もあります。
しかし、なんとなく日本のエンジニアの方は、「自分はBizDevなんてそんな」っていう人が多い気がしていて、とてももったいなく感じています。

みんな大好きYconのこの本を読んで感じたことでもあるのですが、「シリコンバレーのエンジニアがすごいのは、技術力・層の厚さだけでなく、エンジニアが自分で営業もするところだ。」ということです。
もし、野心があるエンジニアなのであれば、BizDev周りにもチャレンジされたら面白い世界になるな〜と思うので、そこんとこよろしく!
(もちろん、技術を突き止めていくことも大事だと思います。ただ、BizDev経験のあるエンジニアって本当に少ない。)
ちなみに弊社でもそういう野心あるエンジニアの方を募集しています。
(追記:エンジニアの方に営業をお願いする予定はございませんf^^;)

https://kanmu.co.jp/
※Update(2019/02/01)
※今までの話は、複数のカード会社様と話を進めていた経緯もあり、特定の会社様とのエピソード、というわけではありません。