カンムで使ってる事業計画のテンプレを公開します

シード期からシリーズB(IPO前)くらいまでは、社長自ら事業計画を作っているかと思います。
ただ、そのテンプレやお作法は、誰からも教わったことはありませんでした。
(1回、事業計画作りの勉強会にはお邪魔させていただいたことはありますが)
ただ、ちゃんと人に説明できて、かつ細部まで洗い出しを行い、自分で納得感のある事業計画があると、対VC、対社内、諸々が捗ります。
社内向けのメリットはこちらで書いてます。
» 【カンム紹介】事業計画を公開して共通言語を作る
そこで、地味に8期目に突入して、100回くらいブラッシュアップして最近落ち着いた弊社の事業計画のテンプレを公開します。
» 事業計画サンプル(夜は酒も出すラーメン屋)powered by カンム八巻 @8maki
題材はなんとく「夜は酒も出すラーメン屋」にしています。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/15lzMiNXmhDtyP1Hy3HvFq7C1LV_KfWnOGCp8xIIpFzY/edit#gid=0

※Googleにログインして閲覧したらコピーできるので自分でいじってみてください
この事業計画を書くに当たり、7つのルールを設けています。
ルール①売上等の変数を因数分解
ルール②手入力と計算式のセルを分ける
ルール③今後の具体的な施策と影響する変数を明示
ルール④そのまま推移する部分はオレンジ色で
ルール⑤実際の数値は計画と別の列に記載する
ルール⑥複数シナリオ化
ルール⑦年次計画も自動で出るようにしておく

ルール①売上等の変数を因数分解


この事業計画は、売上 – 費用 = 営業利益 というシンプルな構成になっています。
それぞれの項目を因数分解=ブレークダウンして、より詳細なものを記載して精度を上げていきます。
ここでは、
売上 = ラーメン代 + 酒代
= ラーメン平均単価 * 月次注文数 + 酒平均単価 * 月次注文数
= ラーメン平均単価 * (一人当たりラーメン注文数 * 月次来店数) + 酒平均単価 * (一人当たり酒注文数 * 夜の月次来店数)
の数式が前提となっています。
ポイントは、10%±くらいの精度で書ける数値まで落とすこと、です。
月の売上は?と聞かれてもすぐにはわかりませんが、出すラーメンの平均単価は?ならある程度目星がつけられます。
また、spreadsheet上、売上でも費用でも使う共通変数、重要なKPIは上に書き出しています。
ここでは「月次来店数」等です。
なお、実際に始まっていない事業ほど、この変数は細かくブレークダウンしたほうがいいと思います。
気づいていない費用や、変数を出し切るためです。

ルール②手入力と計算式のセルを分ける


手入力すべきセルは青色にしています。
シミュレーションする時にいじるべきセルをわかりやすくするためです。
ルール①で言うところの「ある程度想定できる数値」を入れるべきセルです

ルール③今後の具体的な施策と影響する変数を明示


自分のメモだけでなく、他の人に共有する際にも、いつ何をやるか?を示すために重要です。
また、その施策に応じて、どの変数が影響を受けるのか?を紫色にしておくとより、伝えたいことがわかります。
この場合、広告を打つことで、「時間当来店数(夜)」を7人→8人に見込んでいることを示しています。

ルール④そのまま推移する部分はオレンジ色で

また、今後大きく変動しない変数は、ベースとなる月の数値を参照するようにして、全てオレンジ色にしています。
「時間当来店数(夜)」のベース月が太字なのは、ルール⑥で複数シナリオに対応しているためです。
例えば、広告を打ったとしても、時間当来店数(夜)が8人ではなく、7.5人だった場合、ここだけいじれば今後も方向修正できるようにしています。

ルール⑤実際の数値(実績)は計画と別の列に記載する


この事業計画では、過去の実績も記載しています。
ただ、計画を上書きしていってしまうと、そもそもどういう想定をしていたかわからなくなってしまうため、計画と実績は別の列にして記載しています。
こうすることで、計画(予)と実績の差分がわかりやすくなります。
なお、実績が太字になっているのは、運用上の都合で、既に確定した数値は太字にしているためです。
例えば、外部に依存している数値(水道代等)は、後日確定したものが来るので、確定するまでは当てで入れたりしています。
確定したら太字にする。
この時、行数を減らす工夫として、あるKPIに対する割合で決めちゃうことも多いです。

例えば、雑費ですが、内訳が複雑すぎるので、ざっくり対人件費で割合を出して、今後修正していくようにしています。

ルール⑥複数シナリオ化


この事業計画では、BEST/NORMAL/WORSTの3シナリオも一度に計算できるようにしています。
各シナリオによって、大きく数値が変わり得るものは、下記計算式を入れています。
A1の数値によって、そのセルの数値が変わります。
=SWITCH($A$1, 1, 10, 2, 8, 3, 6)
これは、広告宣伝費を打ったときの、時間当来店数(夜)なのですが、BESTでは、10人、NORMALでは8人、WORSTでは2月より落ちて6人としています。
イメージとしては、BESTシナリオはVC向け、NORMALシナリオは、確度の高いシナリオとして社内向けに作っています。
WORSTは文字通り、最悪のシナリオです。

ルール⑦年次計画も自動で出るようにしておく



月次計画の右下に、年次計画も作っています。
これは、長期の計画を見る時に便利です。
また、ルール⑥の複数シナリオ別に見るとより、アップサイドとダウンサイドがわかりやすくなります。
この時、ルール⑤で計画と実績の列両方あるため、実績列だけに年次を書いておいてその列だけ合計する。
具体的には2018と入っている列だけ合計するように工夫しています。

=SUMIF($H$2:$AT$2, AY$41, $H4:$AT4)

これらを以て、事業計画を立てて、逐一Updateするのがだいぶ楽になりました。
ポイントとしては、行数を増やしすぎないことです。
複雑になりすぎると自分もそうですが、人に見せる時大変です。
ただ、ブログではなかなかエッセンスが伝わらない気もしており、どっかで勉強会を開くのも吝かではない気がしてはいます。

日銀のFinTech資料(主に中国とキャッシュレスについて)

今回は短めに。
去年、日銀のFinTechセンター長に就任された、河合さんの資料が上がってました。

» FinTechが描く未来~利便性かBig Brotherか
個人的に面白かったのは、2点。

Alipayのスマホホーム画面


今Alipayが揃えているサービスが網羅されたホーム画面です。
MMF投資がトップに来ているのが面白いですね。
このホーム画面を、日本のFinTech企業は埋めに来ているイメージです。
そもそものプラットフォームである、ウォレット競争も始まったばかり、という感じではありますが。
» 参考:スマートペイメント(決済)の業界マップと競争領域

Alipay/WechatPayのシェア


2016年1月と、少し古いソースではありますが、久々にAlipay/WechatPayのシェアが確認できました。
この時点では半々ですが、既にWechatPayが抜いている印象。

【告知】

10/26(木) @渋谷で、FinTech WATARU会の第二回やります。
» FinTech WATARU会 #2「目論見書とか通貨とか信販会社とか」
引き続き、弊社ではエンジニアを募集しています!
» 既存金融サービスを越えていくJavaScriptエンジニア募集

LINE内の5つの通貨、LINEコイン/ボーナスコイン/ポイント/Cash/Moneyとは?

前回、日本に存在する通貨を分類しました。
» 日本に存在する通貨(法定通貨・暗号通貨・電子マネー・ポイントの違いは?)
それぞれ、法的にできること、できないことが決まっており、企業によっては通貨を使い分けしていることもあります。
その代表格がLINE。
LINEのアプリ内には、最低でも5つの通貨が存在しています。(ゲーム内通貨は除く)
2016年5月に、ゲーム内アイテムが通貨と判断されて一悶着あったので、ココらへんの整理はかなり本気でやっていると邪推していますf^^;
» 毎日新聞:LINEゲーム 一部アイテム通貨認定 関東財務局

改めて、通貨の制約を振り返ります。
電子マネー=前払式支払手段は現金化(法定通貨と交換)できない
ポイントは現金で買えない
LINEコインは、スタンプを購入するためのLINE内通貨ですが、明確にボーナスポイントと分けて表示されています。
ボーナスコインは、LINEコインに交換、というか充当可能ですが、現金で購入できません。
LINEコインの資金決済法に基づく表記はこちら。
LINEポイントは、LINEの共通ポイントのように扱われていて、アンケートに答えたり、LINE Payを使ったりして貯まります。
いわゆる一番メインとなるポイントとなっています。
なお、LINEポイントからLINEコインに交換できます。
ポイント→前払式支払手段 への交換は可能です。※逆は不可
ややこしいのが、LINE CashLINE Moneyでして、両方共、LINE Payで決済する時の残高として使用します。
ただ、LINE Payは決済だけでなく、送金や引出しなど複数の機能があり、どの機能を使うかでCashとMoneyが切り替わっているようです。
こちらの画像がわかりやすいです。

出典:意外とわかりにくいLINE Payの仕組みを徹底解剖。LINE CashとMoneyの違いとは?手数料はどこにかかるの?
初めてチャージする時は、本人確認が不要なLINE Cash(前払式支払手段)でチャージされます。
これはそのまま決済に使うことができます。
本人確認を取ると、引出しが可能なLINE Money(資金移動業)に変換されます。
面白いのが、送金すると、受け取る側のLINE MoneyはLINE Cashになっている点です。
受け取る側が本人確認をしていない場合があるため、だと考えられます。
また、LINE Money(資金移動業)だと100%の供託が必要なため、50%の供託で済むLINE Cash(前払式支払手段)にしておきたいと考えているかもしれません。
そして、11月中旬に本人確認無し状態でも送金ができるようになる!、と告知されていたのですが、、、

見送りとなってました。
要は前払式支払手段(LINE Cash)なら、現金化ができないため送金できる、っていうストーリーで、Kyash は法的整理されていたはずなのですが、どうなのでしょう?
もし法的にアウト判断されているとしたら、いよいよマネロン規制が強くなっているということかと。
逆に、メガの動きが活発になってきているのも注目です。
» 携帯番号で送金 3メガ銀が実験、24時間低コストで ブロックチェーン活用、預金口座と連動

【告知】

10/26(木) @渋谷で、FinTech WATARU会の第二回やります。
» FinTech WATARU会 #2「目論見書とか通貨とか信販会社とか」
引き続き、弊社ではエンジニアを募集しています!
» 既存金融サービスを越えていくJavaScriptエンジニア募集

Apple Pay的な某が普及した世界にはメインカードは存在しない

先日、弊社プリカでビットコインチャージを再開して、その時に合わせてpediaにインタビューしていただきました。

» IoT化された新しい世界に必要な「カードの未来」…カンム代表取締役社長の八巻氏が語る、少額決済の可能性
https://thepedia.co/article/1422/?order=1&primary_tags=Kanmu
その中で、Apple Pay的な某(なにがし)が普及すると、メインカード、という概念がなくなると思います、ということを書いています。

1. Apple Pay的な某が普及すると、クレジットカードや電子マネーを複数持つことに負担がなくなります。そして、お店によって最もオトクなカードを自動で選択して決済してくれる機能が生まれます。 ※Apple Payにはそういう機能はありませんが、”某”が作るのは必然だと思います。
2. すると、ハウスカードが一気に増えます。なぜなら、そのお店で最もオトクな決済手段を提供できるのはそのお店だからです。ここで、与信のいらない全員に即時渡しできるプリペイドカードを選択するお店も増えるでしょう。
3. 同時に、ハウスカードすら出さずに、既存の決済手段に相乗りする、CLO/特約店✕CRMという分野が生まれます。要は、CLOで使った人のデータをお店のCRMと連動したらそれがいわばハウスカードの役割を果たすので、生カードを発行しなくてもよい、という選択をするお店も増えると思います。
4. カードの話に戻すと、このカードを主に使おう、ということがなくなり、メインカードという概念がなくなります。その場で勝手に一番オトクなカードが使われるのですから。一番はじめに作ったカードをなんとなく使い続ける層はいなくなります。ただ、ハウスカードがない場合の決済手段としてデフォルトカード、というものが生まれます。(ある種メインカードと言えますが、もっと消去法的です)
5. デフォルトカードの候補は、強いポイントを提供できるカード会社のカードが選ばれやすくなります。
6. そしてカードそのものにロイヤリティはなくなります。旅行のときは保険の強いカード、車乗るときは車のカードなど、シーンごとに使い分けられるからです。そして、リボや分割払いに強い、金融に特化したカードも生まれ、カードローンの人たちの参入が増えるでしょう。お店でブラックカードをちらつかせてモテる、という文化も消えると思います。
7. メインカードがなくなると、リボ等の金融商品の導線も弱くなりなります。よって、デフォルトカードを目指すカード会社(ポイント系、ラグジュアリー系)、ハウスカードを主軸にするマーケティング系カード会社、リボ専用カード等の金融に特化したカード会社に如実に分かれていくと考えています。

これは、一回自分のFacebookで出していた話でして、いただいたコメントのご回答を。

ポイント/割引オタクみたいな人はそうなるだろうけど、普通の人はそこまでしない

今のクレジットカード業界はまさにそうで、わざわざポイントのために複数のカードを持ち歩く人のほうが少ないとは思うのですが、それを1箇所にまとめて(スキャンしたりして)自動で出し分けしてくれる存在が、”Apple Pay的な某”、というものだと思っています。
敢えて某(なにがし)と書いてるのはそういうことで、そんな簡単なルールは今のマシンラーニングの技術でも割りと簡単に実現できると思います。
あとは、1箇所にまとめておける、というインフラの問題なので、それこそ2020までに、ブランドの非接触端末(スイカみたいにかざすだけで決済できるやつ:Visa payWaveとか)が普及すると、Apple Payじゃなくてもそういう某が作れちゃうと思うのです。
そうなると、カードというのはアプリ上で簡単に発行される、ということが選ばれるための前提条件となって、ブランドプリペイドが普及しはじめるような気もしています。
いよいよ小売が消費者金融を握る感じになるのでしょうか。
宣伝ですが、今回イシュアとしてのオペレーションを回している中で、あまり世の中に伝わっていないカードの仕組みとかを、こちらのコラムで書き始めていますので、もしよろしければご笑覧ください。
» ガソリンスタンドや宿泊施設がプリペイドカードで使えない理由
http://hello.vandle.jp/why-unusable-merchants/

カードの信用情報を簡単にチェックできるCredit Karmaがすげー伸びてる

久々の投稿だが、最近チェックしている金融系サービスがある。
その名も「Credit Karma」。
アメリカではクレジットカードが、全購買の30%も使われているが、そのクレジットカードの信用情報”クレジットスコア”というのも一般的である。

アメリカにおいては、支払い情報(履歴)であるクレジットヒストリー及び、クレジットヒストリーによって計算されるクレジットスコアは、生活を大きく左右する指標となっている。クレジットカードの取得の可否やローン審査における金利への影響、部屋の賃貸、さらには就職活動にも影響を与えるという。クレジットレポートがなければいくら現金を持っていても信用してもらえず、部屋は借りられない[2]。クレジットスコアが低ければ、ローンの金利は10%以上も高くなり、就職には困難が伴う。 » 信用情報 – Wikipedia

とWikipediaにもある通り、クレジットカードの信用をスコア化するもので、生活にかなり影響を及ぼしているようだ。
しかし、そのクレジットスコアは、今まで信用機関が独自に試算し、チェックするのが面倒くさかった。
それを解決するのが Credit Karma だ。

何はともあれ、下記のチャートを見てもらいたいのだが、めちゃくちゃ伸びている。
Techcrunchによれば、今年1月時点で、1日に10万人ペースでユーザーが増加し、既に200万人が登録しているとのこと。

さらに Inc. が発表する、2012年伸びた企業ランクにも40位にランク入りしている。

ではどういうビジネスモデルかというと、Mint.com と同様、広告収入で生計を立てている。
ただ普通の広告ではなく、保険やローンの切り替えや特典の利用といったものだ。
しかも、カードの信用情報というかなり重要な個人情報をベースにマッチングを行なっているので、金融商品の広告にはとても相性が良い。
2007年5月に創業し、去年の9月時点で合計300万ドルを調達、既に年商570万ドルを達成している。
個人的に、Web上での個人の認証・信用情報に、決済の信用情報を使う、というアイディアにはとても興味がある。
OpenIDでもそういう信用情報との連携を検討している動きがあるらしく、オンラインでの個人のアイデンティのあり方は、これからホットなトピックになっていくのではないか。
定量化できる最も信用のおけるスコアだと思うし。
同様のサービスに Credit Sesame というサービスもある。
ちなみに、日本でも CIC という機関が、1000円で自分の信用情報を紹介できるサービスを提供している。
Win機、IE8未満のみ、というWeb業界なら発狂しそうなスペックのマシンでしか、パソコンでの開示はできないが、クレジットカードを使っている人は一見の価値があるのではないだろうか?